痛みを伝える神経や、痛みを増幅している交感神経に向かって、ブロック針を刺入し、局所麻酔薬を注入することによって、神経の伝達を遮断することを神経ブロックとよびます。ペインクリニックで中心的治療手段となるものです。
局所麻酔薬は、その本来の効力は1時間程度できれてくるものです。ならば、神経ブロックは「一時しのぎ」にすぎないのではないかとの意見も聞こえてきそうです。
しかし、痛みのある部位では筋肉がこわばったり、血流が滞ったりしていることが多く、そのことが痛みを一層強くしています。常に痛み刺激があるために、神経が過敏な状態になっていることもあります。
たとえ一時的にせよ痛みの伝達を遮断し、また局所の血流を改善していけば、自然治癒力が発揮できる環境が整えられ、痛みが軽減されるのです。
痛みの部位、種類に応じて様々なブロック法がありますが、ここでは当院で最も多く施行している星状神経節ブロックと硬膜外ブロックについて説明します。
星状神経節ブロック(せいじょうしんけいせつブロック)
星状神経節ブロックは交感神経系のブロックのひとつです。頭痛、顔面の痛み、くび・肩・上肢の痛みに効果があります。痛みがあると、交感神経系が緊張します。そのため、血管が収縮して血流が悪くなり、筋肉がこわばり、痛みはますます増強します。交感神経の交差点のようなところが頚椎(くびの骨)の前面にあり、ここに少量の局所麻酔薬を注射します。
30分間静かに休んでもらいます。
硬膜外ブロック(こうまくがいブロック)
硬膜外ブロックは脊髄(せきずい)神経のすぐ外側に局所麻酔薬を注入します。頭部・顔面以外の痛みに適応があります。痛みを伝える神経を直接遮断すると同時に、交感神経系も遮断します。それにより、血流がよくなり痛みへの治療効果をもたらします。
1時間静かに休んでもらいます。血圧を5分毎に計ったりします。
トリガーポイント注射
正確には神経ブロックの範疇には入らないと思われますが、痛みの悪循環を遮断するという意義は同様のものです。
指で押すと痛いところ、筋肉の小さなこわばりを触れるようなところにする注射。表面に近いところでの注射。主に頚部、腰部で施行します。
神経ブロックまでは必要ないと判断される軽症の場合や、抗凝固薬(血液をサラサラにすると説明されている)を内服されている方には神経ブロックに置き換え施行します。